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情報科学

情報科学で学ぶこと

情報科学と情報工学は、どちらもコンピュータに関する学問という点で共通しています。両者の定義は人によってまちまちですが、ここでは前者をコンピュータの根本原理(数理的・理論的なアプローチ)の研究、後者を現在のコンピュータを発展させるための応用研究と考えることにします。

情報科学には、コンピュータの計算理論を考える分野、機械装置としてのコンピュータ(ハードウェア)について考える分野、コンピュータに的確な指令を出すソフトウェアの研究、安全に情報をやりとりするための暗号の研究などがあります。また近年では、膨大なビッグデータを解析するための数理的・統計的なアプローチや、データサイエンスの基礎理論を学ぶ分野も急速に拡大しており、実社会の複雑な課題を数理モデルによって解決に導く研究が強く注目されています。

人工知能(AI)の発展において、情報科学はもっとも重要な基盤を占めています。機械学習や自然言語処理、コンピュータビジョン(画像認識)といった分野は、コンピュータが人間の知的能力を模倣し、パターン認識、問題解決、意思決定などの能力を実現するための「理論的・アルゴリズム的な仕組み」を研究する領域です。たとえば、深層学習(ディープラーニング)を活用した高度な画像生成や、大規模言語モデル(LLM)による自然な対話・自動翻訳などは、情報科学における緻密な数理研究とアルゴリズムの進化が生んだ最大の成果といえます。現在の生成AIブームを含め、AI分野のさらなる進化は情報科学の理論的発展と常に表裏一体であり、今後ますますその重要性を増していくでしょう。

たとえば、私たち人間が通常十進法で計算しているのに対し、現在のコンピュータは電圧の有無、すなわち「1」か「0」かの二進法で計算しています。「計算理論を考える分野」では、これらとは全く異なる新しい計算方法を研究しています。その代表例が「量子コンピュータ」です。これは、情報の重ね合わせという物理現象を利用して、一度に大量の計算を並列処理しようとするもので、すでに一部で実用化やクラウド公開が始まっています。また、生物のDNAを構成する4つの塩基を利用して計算を行う「分子(DNA)コンピュータ」などの革新的なアプローチも研究されています。こうした次世代コンピュータの実現には、高度な理論(アルゴリズム)の構築はもちろんのこと、それに適合する新しい半導体素子や新素材といった装置(ハードウェア)の開発が不可欠です。

ソフトウェアの研究では、生物の進化の仕組みを応用し、プログラム自身が交配や突然変異を繰り返して自動的に洗練されていく「遺伝的プログラミング」など、これまでにない画期的な手法が開発されてきました。さらに近年のAIの進化に伴い、ソフトウェアが自らの動作履歴から自律的に学習し、コードを最適化・修正していく仕組み(AIによる自動プログラミング技術など)の研究も急速に進んでおり、プログラムと知能の融合領域として大きな変革期を迎えています。

また、現在のコンピュータが苦手とする計算の特性をあえて利用する研究もあります。たとえば、コンピュータは非常に大きな桁数の因数分解に膨大な時間がかかるため、この性質が現在のインターネットセキュリティを支える「公開鍵暗号」に利用されています。しかし、先述した量子コンピュータが完全に普及すると、これらの暗号は一瞬で解かれてしまう可能性があります。そのため情報科学では、次世代の脅威に対抗するための「耐量子暗号」や、データの改ざんを防ぐ「ブロックチェーン技術」といった、未来の安全を守るための高度な暗号理論・セキュリティ研究が活発に行われています。

理論、ハードウェア、暗号の各分野でこれまでにない画期的なコンピュータが開発されれば、社会はまた新たな局面を迎えることになるでしょう。そして今後は、AIやビッグデータの爆発的な発展によって、情報科学が私たちの社会システムや日常生活のあり方に及ぼす影響はますます大きくなっていきます。情報科学は、まさに未来の社会のプラットフォームを理論から創り出す、無限の可能性をもった学問です。

学部・学科選びのヒント

大学では情報学部データサイエンス学部情報科学科など、理学部や工学部の中の情報系の学科で学ぶことができます。

ただし同じ「情報」という名前でも、ここで述べた情報科学を学ぶところから、コンピュータを道具として使いこなすためのスキルを身につけるところまでさまざまですので、注意しましょう。

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